デュポン分析の謎

ROE(自己資本利益率)の説明に高確率で出てくるROEは3つの指標に分解できるという説明。デュポン分析(デュポン公式、デュポンシステム)というらしい。ROEの説明も3つの各指標もわかるのだけれども、3つに分解するところの説明がいまいちわからない。3つに分解できるのはわかるのだけれどもわざわざ分解する意義とか。何なら、明らかに間違っている説明すら見受けられるので、ま、マジかと思うし、自分が間違っているのかと不安にもなる。この??な状態を解消したい。が、まだできていない。


ROE

まずはROEについて簡単に。

 

ROE = 純利益 自己資本

 

株主から出資された資産をどれだけ利益に繋げられたかといった指標だろう。まぁ、そういう指標なんだろうなと思う。(正直、企業は総資本を使って利益を産み出すと思うので、それが自己資本かどうかにこだわることでもないような気はするのだけれども。ただそれはこのページで言いたいことではない。)

 

 

デュポン分析

ROEは次のように分解して分析するというもの。

 

ROE = 純利益 自己資本

  = 純利益 売上高 × 売上高 総資本 × 総資本 自己資本

  = 利益率 × 回転率 × 財務レバレッジ

 

確かに分解はできる。

 

 

疑問

よくわからないのはなぜこうやって分解するかということだ。確かに分解はできる。でも売上高と総資本は別の値を入れても成り立つはずだ。

 

例えば

ROE = 純利益自己資本

  = 純利益従業員数 × 従業員数負債 × 負債自己資本

 

でも成り立つはずだ。何なら昨日の気温と富士山の標高でも成り立つはずだ。

 

どんな数字を持ってきても3つに分解できるのになぜ売上高と総資本なのだろうか?

 

そしてこれに拍車をかけて私を混乱させるのが、

3つに分解した各項目を改善すればROEが改善する

と書いているサイトがあることだ。いろんなサイトに書いてあるから、私がなにか思い違いをしているのか?という感じなのである。

でもこれは中学生でもわかる間違いだろう。売上高、総資産あるいは回転率をどう変えてもROEは変化しない。

それなのに平然と書いているサイトがある。自己肯定感の低い私はそれだけで自分が間違っているのではないかと不安になってしまうのだ。いや、でも、まさかね。

 

 

2つに分解する場合

自己資本利益率を2つに分解するバージョンもあるみたいだ。

ROE = 純利益自己資本

  = 純利益総資本 × 総資本自己資本

  = ROA × 財務レバレッジ

 

これも確かに分解できる。回転率がない分、なんか分解した意味があるように見えてくる。

 

いや、しかし、結局ROEに効いてくるのは純利益と自己資本のみなのだよな。ROAの純利益の部分と財務レバレッジの自己資本の部分がROEに効いているのであって、ROAの総資本の部分も財務レバレッジの総資本の部分も全くROEには効いていないのだよな。総資本を小さくしてROAをあげても打ち消すように財務レバレッジが小さくなるので結局ROEは変わらないという。

 

分解することによってなんだか情報が増えたような気がしてしまうが、結局のところなにも変わっていないのだよな。2つに分解しようが3つに分解しようが。

 

 

結局のところ、、、

2023.01.04時点の私の認識としては以下だ。

・ROEも売上高も総資産も売上高利益率も回転率も財務レバレッジもROAも財務状況を把握するのに意味のある指標だと思う。

・ただし、ROEを3つ(あるいは2つ)に分解するのは特に意味のある行為ではない。分解したところでなにも新しい情報は得られない。なぜならROEに影響を与えるのは純利益と自己資本のみだからだ。売上高も総資産も変化させても相殺されるのでROEには影響しない。売上高利益率も財務レバレッジもROAも増えればROEが増えそうに見えるが、実際にROEが増えるのは純利益が増えて売上高利益率が増えたときと自己資本が減って財務レバレッジが増えたときのみだ。売上高を小さくして売上高利益率を増やしてもその分回転率が小さくなって相殺されるし、総資産を増やして財務レバレッジを増やしても回転率がその分減って相殺されるからROEは変わらないからだ。分解はできるが、それをやる意味は特にない。



特にやる意味がないことをさも重要なことのように説明されるから混乱するのではないかと思うのだ。